かまってほしい
回復期病棟に移ってからの生活がルーティン化してきた。
毎朝6:00に起床して洗顔。電気シェーバーで髭を剃るとマスクをして車いすで病室を出る。
ナースステーションの前に備えつけてある血圧測定器と体温計で血圧と体温を自分で測定し、専用の用紙に記入してナースステーションの受付に置いてあるガンガンに投入する。
ちなみに用紙への記入は鉛筆。ボールペンは危ないからという判断なのだろうか。
7:30には朝食。一日の食事で一番寂しい。
朝食を食べるとすぐに病室を出るのだが、その時が一日で一番気が重い。リハビリ室に向かわなければならないからだ。
自分のリハビリ時間は毎日8:30から10:20くらいまで。
担当の理学療法士に余裕があれば夕方に30分ほど追加でリハビリを受けられることがあるが、その確率は三日に一度くらいだ。
本音としてはリハビリなんてしたくない。
しっかりとリハビリに励めば、一人でもそれなりの生活の質は担保されるのかもしれないが、怪我をする前のようにスキーやスノーボードを楽しむことはできないだろうから。
先に楽しみがなかったら、目の前にある辛いことに耐えられるほどタフではないからだ。
リハビリが終わるとあとはほぼ自由な時間。
正午には昼食。昼食は一日の食事の中で一番華はある気がするが、それもあくまで病院食。期待しているとがっかりさせられる。
毎月曜日の午後はレントゲンの撮影があるが、レントゲン室も車いすに乗って自分で向かう。
美人の看護師が寄り添って一緒に向かってくれるなんてことは幻想だ。
夕方、親しくなったある入院患者とお茶をすることがままある。
その患者は40代の男性で両足を骨折している。
自分と同じ日に手術を受けたことを知って仲良くなった。
彼は相部屋で過ごしていて職場は有給扱いらしい。
だが、実際は朝から夕方まで部下にパソコンやスマホを使って部下に指示を出したり、相談に乗ったりしているようだ。
まあ、どこにでもあるような糞みたいな会社だ。
そんな彼の置かれた環境もあって、お茶を飲むときには彼の愚痴を聞くことが多い。主に相部屋で共同生活している厄介な他の入院患者のことや仕事のことだ。
それに比べると自分は恵まれているのかもしれないが、それでも気になることはある。
彼には妻子がいるのだが、妻を一度も見たことがないことだ。
母親や会社の同僚や上司は見かけたことがあるのに、だ。
長年連れ添った仲が良い夫婦なんて存在するのだろうか。
彼の愚痴を聞くときもそうでないときもシャワーを浴びるのは夕食前がほとんど。
夕食は19:00。昼は肉料理が多いが夜は魚料理が多い。
もちろん、刺身やアジフライが食べられる訳もなく味気ない料理ばかりだ。
消灯は21:00。それまでに歯を磨いてベッドに入ることになる。
リハビリで疲れているせいか、最近は寝つきが悪いこともないし、悪夢に魘されることも減ってきている。
ただ、楽しい気分になるような夢は入院してから見たことがない。
回復期病棟に移ってから、看護師たちからのフォローは激減。
怪我で弱っている寂しいアラフィフのオッサンは若い女性たちにカマッテ欲しいのに、ほぼ放置されている毎日だ。
今の自分は優しさに飢えているのだろう、たぶん。